8割は相手に話してもらう。葬儀屋の息子が実践する「相手の心を動かす」コミュニケーション術
日記のあらすじ
人の心を動かす必要がある場面で、葬儀屋の息子は「8割は相手に話してもらい、2割で自分が質問し、相手の価値観や望みを探っていく」そうです。
相手のタイプに合わせて話し方やテンションを調整するなど、いろいろな工夫も重ねるそうですが、一方で「技術だけでは人は動かない、相手に対する本物の興味関心が根底になければ駄目」とも語ります。
今回は、そんな葬儀屋の息子のコミュニケーション論、人を動かすために必要な「聞く力」と「相手への興味」について聞きました。
相手に対して本物の興味を
―― こんにちは。今日もよろしくお願いします。
葬儀屋の息子:よろしくお願いします!
―― この前、東京に出張に行かれたみたいですね。
葬儀屋の息子:はい。リフレッシュしてきました。
―― 出張がリフレッシュだと。
葬儀屋の息子:そうですよ!
この田舎で、毎日仕事しかしてないので、仕事の予定であろうとプライベートの予定であろうと、東京への移動自体が息抜きみたいな状況です(笑)
―― 具体的には何をしてきたのですか?
葬儀屋の息子:経営者の友達、仕事を頑張っている元同僚に会いに行きつつ、東京という土地に身を置きながら、最新の流行に触れてきました。
―― 秘密の作戦会議を行いつつ、感性や知識を、最新の状態に更新してきたって感じですね。
葬儀屋の息子:はい。ファッション系のお店であったり、飲食店であったり、経験する全てのサービスが葬儀社の仕事につながっていますし、流行を感じる行為自体が僕にとってはリラックス効果があります。
普段は一滴も飲まなくなったお酒を飲んでゆっくり話す時間も、今まで以上に大切に感じられるようになりました。この田舎で、仕事ばかりしている今の環境になってからは特に(笑)
―― なるほど。仕事を兼ねたプライベートの予定も結局は仕事の糧になるみたいな感じですね。
ちなみに、ちょっと疑問なのですが、経営者の友達、仕事を頑張っている元同僚ってきっと、ノブくんの同世代ですよね。
その同世代の友達たちもノブくんみたいに話すんですか?
葬儀屋の息子:どういう意味ですか?
―― ノブくんの印象的な特徴として、自分の主張をするとき、相手の目を見て、すごく堂々と打ち出すじゃないですか。

一般的な日本人の場合、本心や本音の部分を打ち出す時、ちょっと遠慮がちになってしまいますよね。
結果を強く望む場面であるほど、自分のオファーを伝えた後、あたふたと二の句、三の句を継いで場の空気を取りつくろったりしてしまいます。その点、ノブくんは本当に堂々としているなと。
葬儀屋の息子:僕の場合、えげつないほど堂々としていますね。
―― 「絶対にうちに来た方がいい」「あなたを採用したい」みたいに、採用面接の場面でも、自分の要望をストレートに堂々と言い切るじゃないですか。
なので、その同世代の経営者や元同僚たちはどうなのかなと。ノブくんの周りが全員そうなのか、ノブくんがちょっと突出しているのか。
葬儀屋の息子:どうですかね。仕事を頑張って結果を残している人ばかりなので基本堂々とはしていると思いますが、話を日本人一般に広げると確かに、最後の選択を相手にゆだねがちな気がします。でも、営業において、クロージングは言い切り力が大事ですからね。
―― その辺のセールススキルみたいな部分は、これからアルテに入ってくる新入社員たちにも必要かもしれませんね。
葬儀の世界で、相手が望まない状況でも「葬儀のナレーションづくりに必要なのでいろいろ話を聞かせてください」みたいに口説く場面も出てくるはずですし。
葬儀屋の息子:確かに、そうかもしれません。
―― アルテで働く若い方々も読んでくださっている葬儀屋の息子日記なので、セールスに関するノブくんなりの哲学を今回は掘り下げてみませんか? すぐに言語化できたりします?
葬儀屋の息子:できますよ。前の会社で、採用人事を任せられ、何万人という人と面談してきた、言い換えると、セールスの回数を圧倒的に重ねてきたので。
―― では、何から始めましょう。まずは、セールスの定義からいきますか。
葬儀屋の息子:セールスでは、自分対お客さんという構図がまずあって、そのお客さんに買いたいと思わせる、参加したいと思わせるというゴールがあります。
最近の僕はむしろ、セールスよりもマネジメントに力を入れていて、どうやったら強い組織になるか、社員をどのように育てていくかばかりを考えていますが。
―― ノブくんは確かにもう、経営者の側、マネジメントの側に重心が移動していると思います。
ただ、人材採用などの場面では、自分が口説く、ある意味でプレイヤーとして動く瞬間もまだまだあると思います。
そのセールスパーソンとしての一面を前面に押し出して動く際に心掛けている点は何かありますか?
葬儀屋の息子:「7〜8割は相手にしゃべらせて、残りの2割で自分がしゃべる」です。
―― なんか、ベストセラー『人は聞き方が9割』※みたいですね。
葬儀屋の息子:相手に話してもらわないと、相手を口説くポイントが分かりません。ニーズや要望は人それぞれなので、どこを掘り下げればいいのかを先に探る必要があります。
また、たくさん話してもらえれば、自分=いろいろ打ち明けた相手になるので、相手からの信頼度も高まっていきます。その意味で、セールスでは、どれだけ相手が話をしている時間が長いか、が基本になってくると思います。
―― その基本はよく耳にするんです。ただ、そもそも論として、話してくれない相手もいますよね。
すごく、アウェイな空気が流れているというか、気まずい状況でいろいろ聞き出さなければいけない場面というか。最初から、心の扉を閉ざしているみたいな。
要は、とっとと帰れ、というスタンスの人に物を売り込むって難易度が高いと思いますが、こういった相手はどうやって話をさせているのですか?
葬儀屋の息子:「なんで?」と掘り下げる垂直質問と、「例えば?」と話を広げる水平質問を組み合わせて、いろいろ聞いていきます。
―― なんだか効果的なテクニックのような気もしますが、そんなテクニック論だけで話してくれますかね?
葬儀屋の息子:おっしゃるとおりで、究極的には、テクニックで人は動きません。なので、さらに大事なポイントとして「相手に対して本物の興味を持つ」が挙げられると思います。

―― どういう意味ですか?
葬儀屋の息子:僕の場合、本気で相手に興味を持って接します。
本物の興味を相手に対して持つと質問も次々と出てきますし、回答を聞いた時の自分のリアクションも変わってきます。
―― 確かに「この人、本当に自分に興味があって聞いているんだな」という感じは相手に伝わりますもんね。
葬儀屋の息子:はい。
―― ただ、それでは答えとしてまだ、満足できません。なぜなら「相手に対して本物の興味を持つ」って難しくないですか?
例えば、中年のおじさんが、若い女の子の話を興味深そうに聞いていたとしても、その根っこの部分には、話の内容への興味ではなくて、よこしまな狙いがあったりするわけですよね。場合によっては。
葬儀屋の息子:マサヨシさんみたいな。
―― おい(笑)
逆もしかりで、若い女子が、おじさんの話を興味深そうに聞いていたとしても、本音の部分には、おごってもらえるだとか、お小遣いをもらえるだとか、自分を押し上げてくれそうだとか、そういった見返りを期待しているケースもありますよね。場合によっては。
葬儀屋の息子:マサヨシさんと話す若い女子はそうかもしれませんね。
―― 一例です。そうなると、ノブくんも、セールスの先に得られる営業的成果があるから「マジで興味をもっています」みたいな感じを出せるという話ですか?
葬儀屋の息子:違いますね。まず、僕の場合、人間に苦手なタイプがあまり存在しないんです。
―― ハハハハハ(笑)
大きく出ましたね。どういう意味でしょう、ちょっと詳しく教えてください。
葬儀屋の息子:要するに、苦手な人間がいない、誰でも好きになれるという意味です。
プラスして、アルテの葬儀の哲学にも通ずる話ですが、どんな人にも必ず、すてきな物語があると思っています。
それぞれの人が、それぞれの人生でつむいできた物語がある、そんな風に思えば、誰の言葉にも耳を傾ける尊い価値があると思えるんです。
―― まあ、そういった思いが根底にあるからアルテの葬儀が生まれたんでしょうね。そもそもの話。
葬儀屋の息子:もちろん、自分から声を掛けに行く、オファーをしに行くという状況では、相手の表情やテンションを通じて人間のタイプを見極め、相手に構えさせないように、相手に合わせた聞き方・態度を徹底するなど、工夫しているポイントはたくさんあります。
子どもなら目線を合わせますし、真剣さを前に打ち出した方がいい場合は真剣な感じを、フランクに振る舞った方がいい場合はフランクさを出して、相手の考えを深掘っていきます。
同時に、相手の言葉を否定せず、褒めて、持ち上げるなども意識しています。これは、マネジメントでも一緒で、先に否定する、先にアドバイスするのではなく、先に認める、先に褒める、その上で助言、アドバイスをする必要があります。
―― 物書きに接する編集者の態度みたいですね。
葬儀屋の息子:ただ、そうした細かいテクニックの根底には、本当に興味を持っている自分が絶対に必要です。そうでなければ、相手の言動やパフォーマンスを細かく見られないですし、心底褒められません。相手にも見透かされます。
その大前提があるからこそ、相手と自分の間に信頼が生まれ、徐々に相手が話し始めてくれるようになるのです。
いろいろなテクニックは、その前提が整った時に、効果を発揮するのだと思います。
相手のタイプに合わせて自分を調整する
―― 今の話を聞いていて思ったのですが、ノブくんの口からよく「人間のタイプ」みたいな言葉が出てきますよね。
今も「相手の表情やテンションを通じて人間のタイプを見極め」みたいな言葉がありました。
前職で、何万人もの採用面接を担当した人間からすると、人間のタイプの分類についても明確な考え方はあるんですか?
葬儀屋の息子:ありますよ。例えば、DISC診断などは有名で、僕自身も、1つのモデルとして使っています。
―― なんですか、それ?
葬儀屋の息子:人間のタイプを4つに分類した指標で、チームワークやコミュニケーションを改善していくためのツールとして、人材採用に力を入れている会社などで採用されています。
―― 具体的には?
葬儀屋の息子:DISC診断では、D(Dominance: 主導型)、I(Influence: 感化型)、S(Steadiness: 安定型)、C(Conscientiousness: 慎重型)と、人間の種類を4つに分類します。
もちろん誰しもが、全ての要素を持っているのですが、この中でもどの要素が強い人間なのか、どの要素の組み合わせが強い人間なのかを分類する際に使います。
例えば、僕の場合は、DとIが強いタイプの人間になります。このタイプの人間は、決断力があり、結果や成果を求める傾向があり、社交的で、周囲の人に影響を与えたり、巻き込んだりします。
一方で、SとCが強い人は、協調性があり、人を支え、信頼関係を大事にする、ルールや正確性を重んじるといった傾向があります。
―― その分類を知った上で、セールスの場面ではどのように使うのですか?
葬儀屋の息子:相手のタイプを知った上で、相手に自分を合わせていきます。コミュニケーションにおいては相手を構えさせたくないので。

例えば、マサヨシさんのように、社交的で、話が好きな人に対して僕が、暗い感じで、ゆっくりと、ぼそぼそっと1時間も話し続けたらストレスに感じると思うんです。
―― 確かに。
葬儀屋の息子:逆に、相手と同じ、相手の好きなスタンスでコミュニケーションをすると、打ち解けた雰囲気や相互の信頼感が生まれやすくなります。
信頼感が生まれれば、こちらの質問を相手も受け入れてくれるようになりますし、質問にも答えてくれるようになります。
なので、人間のタイプを見極め、相手のタイプに合わせて自分を調整すると、先ほど例として出た、話をしてくれない相手にも、会話のチャンスを作っていける可能性が高まるはずです。
―― ただ、その理屈で言うと、D(Dominance: 主導型)とかI(Influence: 感化型)の要素が強いノブくんが、自分と違うS(Steadyness: 安定型)とかC(Conscientiousness: 慎重型)の人になりきる、寄せていくって割と難しいというか、かなり訓練しないと駄目ですよね。
葬儀屋の息子:そうですね。僕自身も、かなりの失敗、試行錯誤を繰り返してきましたから。
ただ、先ほども言いましたが、人には必ず、全ての要素が入っているのです。
ですから、自分とは異なるタイプに寄せていく必要があるとしたら、自分自身の中にある、安定志向を好む部分、慎重な部分を想像するというアプローチがあります。
あるいは、似たようなタイプの友達を想像して、その友達なら、こういうのが好きだよなと考えてみたりします。
―― 先ほど、人間の世界に、苦手なタイプが存在しないみたいな発言がありましたが、人間のタイプを分析した上で、全ての人間に対応できるという意味で、本当に苦手なタイプが存在しないんですね。
葬儀屋の息子:そうですね。とはいえ、苦手とまでは言えなくても、理解が簡単ではないタイプの方はいます。ですので、相当な訓練は必要ですが、価値のある訓練になると思います。
―― これはもう、有料級のビジネスコンテンツになってきましたね(笑)
セールスのポイントとしては、自分が話すよりも相手に話してもらう、そのためには、相手のタイプに応じて、自分のテンションや立ち居振る舞いを合わせるといった話がありました。
質問の仕方も、深掘りするような垂直質問、横に広げるような水平質問を繰り返すという教えもありましたね。
ただ、そうしたテクニックの根底には、相手に対する、うそいつわりのない興味関心が必要だという話もありました。テクニックだけでは見透かされるぞと。
葬儀屋の息子:はい、以上、授業料は5万円になります(笑)
―― 5万円、安いような高いような(笑)もう、コンサルとかできそうね。
葬儀屋の息子:セールスや採用を一定のレベルで行っている人なら最低限理解している話だと思いますよ!
―― まあ、いずれにせよ今日は、葬儀屋の息子がいかに人を動かしていくのか、その一端が分かったような気がします。
そろそろ時間になってきましたので、この辺で今日は終わりにしましょうか。
葬儀屋の息子:そうですね。
―― まだ、30歳なのに、しっかりしているわー。
葬儀屋の息子:まだまだ、こんなもんじゃないですよ。
―― そうですね。楽しみにしています。
それでは、また来週にしましょう。ありがとうございました。
葬儀屋の息子:こちらこそ! ありがとうございました!
(取材・文/坂本正敬)
※葬儀屋の息子メモ
『人は聞き方が9割』(すばる舎)人材育成家・永松茂久による、会話やコミュニケーションの悩みを解決するベストセラー書籍