家族が葬式をつくる時代に?葬儀屋の息子が考える「未来予想図」
今回のあらすじ
今回のインタビューでは、葬儀業界におけるお寺と葬儀社の関係性の変化について聞きました。
従来は、地域と寺院を中心に行われていた葬儀が、核家族化や価値観の変化を背景に、中心的な役割を葬儀社が担う形へと移行してきた時代の変化が語られました。
一方で、その変化に適応しようとするお寺の動きも見られ、葬儀社とお寺の双方の工夫により、業界全体の価値向上に繋がる可能性も示されました。
相乗効果で、葬儀業界のイメージを変える
―― 今日も、よろしくお願いします。オンライン取材が普段は多いですが、今日は久々の対面ですね。
葬儀屋の息子:マサヨシさん、ちょっと疲れています?
―― なんでです?
葬儀屋の息子:いつもは、何歳か上のお兄さんという感じなのですが、しっかり今日は、15歳くらい上のオジサンという表情に見えます(笑)

―― ハハハハハ(笑)昨晩、義理の父親と一緒にお酒を飲んでいて、今朝は、バーベキューの火起こしで煙にいぶされているので、寝不足と二日酔いとスモーキーが重なって熟成している感じだと思います(笑)
ただ、基本的に46歳なんで、逃げも隠れもしない立派なオジサンです。
そんなオジサントークはさておき、今日はちょっと、葬儀屋の歴史というか、お寺との関係性を教えてくれますか?
葬儀屋の息子:と言いますと?
―― そもそも葬儀って昔は、昔とはつまり、葬儀社がないころは、どうやっていたのですか? 私が子どものころ、物心ついてから恐らく最初に参列した葬儀は、おばあちゃんが亡くなった時です。
そのおばあちゃんの葬儀会場自体も、都内のどこかの綺麗な葬儀会館だったと記憶しています。少なくともお寺さんではありませんでした。
でも、それ以前の時代にはきっと、地域によっても違うと思うのですが、自宅やお寺で葬式をする人が主流だったのですよね?
葬儀屋の息子:宗教や地域が違えばもちろん葬儀のスタイルも変わりますが、一般的には自宅かお寺でやっていましたし、ご家族が中心となって、近所の人たちが支えながら葬式を行っていました。この辺の地域では今でも、葬儀の受付は近所の人がやりますよね。あのスタイルは昔の名残です。
ただ、お寺とご家族の間に葬儀社が介在した方が、大切な人が亡くなってパニックなっている時に、ご家族にとっては助かるはずです。
アルテのある富山県南砺市は都心と比べると進んでいませんが、核家族化が進み、地域の繋がりが失われてしまった場所では、自分自身が動けない、手伝いを頼めるご近所もいない状態になってしまいます。
加えて、冷暖房や駐車場が完備され、天候に左右されない葬儀会館は、自宅やお寺で行う葬式に比べて利便性が高いという理由もあって一気に普及しました。
葬儀内容のお打ち合わせ、会場設営から当日の司会進行、返礼品や料理の手配まで、サービスとして葬儀社が一括で引き受ける時代が到来する中で、アルテのような葬儀社が成長してきた経緯があります。

―― もともとは、お寺と亡くなった方の家族の間に立って、お通夜や葬儀を取り仕切るサービス代行事業者として葬儀社が始まったのですね。
ただ、今では「仲介」というレベルではなく「サービスの中核そのもの」という印象を受けます。お客様と最も近くで向き合い、要望を伺い、葬儀に必要な空間を準備していく葬儀社は、最もなくてはならない存在になっているように感じますがいかがでしょうか?
アルテの場合は特に、感動的な〈想い出ギャラリー〉やナレーションまであって、お客様の期待を超えるサービスになっているように感じます。かつ、無宗教葬みたいなスタイルも増えている中で、お寺さんも1つの外注先のようになっていると私には感じられるんです。
葬儀屋の息子:まず、宗教に対する信仰心が時代とともに薄れていって、神仏を拝む頻度がどんどん低くなっていると思います。
さらに、お客様からの実際の声を含め、客観的に見れば、宗教に対する需要と期待される役割も変化していっていると思います。
その中で、葬儀社の存在感が相対的に大きくなっているのではないでしょうか。都心の実態を見れば一目瞭然(りょうぜん)です。
地方ではまだそれほどではないですが、「お寺様第一」だった時代から「葬儀社」へと移り変わってきている実感は確かにあります。時間の問題だと思っています。
―― そうなると、危機感を覚えるお寺というか、ノブくんのように、輪をかけて存在感を増そうとしている葬儀社の存在を、穏やかな気持ちで見ないお寺さんも出てくると思うのですが。
葬儀屋の息子:どうでしょうか。「宗教者離れ」を最も実感している当事者が宗教者さん方のはずなので、「葬儀社」に対してというよりも、対お客様に対する働き掛けの必要性を感じざるを得ないのかな?と思います。
また、あくまでもアルテの場合ですが、僕たちのナレーションや想い出ギャラリーを見て「これいいね」と言ってくださるお寺さんもいます。
―― それは、すてきですね!
葬儀屋の息子:それに、僕たちのように家族に話を聞いて、その家族に合わせた法話をするようなお寺さんも、ほんのわずかですが現れてきています。
―― へえ~、そうなんですね!
葬儀屋の息子:うちがどうこうというよりも、時代の変化に危機感を覚えて、変化の必要性を感じているお寺さんはごく一部ですが、いらっしゃるように感じます。もちろんそれは、若くて柔軟な方に限られるとは思いますが。
―― そうなると今度は、アルテがお株を奪われるというか、アルテの見せどころか減ってしまう、感謝の矛先が再び、お寺に戻ってしまう心配はないのですか?
葬儀屋の息子:ないです。そもそも、お寺さんは、近いところにいるだけで僕たちとは異業種です。そのような心配よりもむしろ、変わろうとするお寺さんの登場をいいことだと思っているくらいです。
昔ながらの法話やお経を、寝ながら聞いている参列者を多く見ている僕からすると、毎回同じ話しかしないお寺さんよりも、熱量を持って、参列者の方が興味をひかれる話をするお寺さんが増えてくれれば、相乗効果で一緒に、葬儀業界のイメージを変えられると感じているからです。
憧れを生むには、仕事そのもの難易度を上げる必要がある
―― では、関連して、宗教そのものを信じない人、仏教やお寺との関係を持たない人が、地方であったとしても増えていった先の未来について、アルテとしてはどのように対応していく予定なのか教えてください。
幾つかの意識調査を見ると、家族葬・身内葬へと一般葬が縮小し、さらには直葬(火葬だけの式)も目立っているとの結果が示されています。
現に昨年、関東に暮らす親せきのおじさんが亡くなった時、おじさんは無宗教者であり、家族を持たず、1人静かに暮らしていたせいもあって、残されたきょうだい(私の母)の意向で直葬で弔いました。
それこそ、お経の読み上げもなく、近親者が集まって、火葬の待ち時間に語らい、お骨を拾い、骨つぼに入れ、持ち帰るだけの最期でした。
このような簡素化の動きに対してノブくんはどのように対応していく予定なのでしょうか。
葬儀屋の息子:これに関してはちょっと、今後の戦略もあるので、詳しく書いてもらいたいくない部分があります。
ただ、無宗教者に対する独自の葬儀を提供する葬儀社が東京などの大都市で増えている点は事実ですし、葬儀=厳粛な空間という固定観念を打ち壊して、私服で集まるような葬儀スタイルも一部では始まっています。
これまでの葬儀では、亡くなった方のご家族は、どちらかといえば受け身で、葬儀社が整えた流れに沿って、ただ参列するといった形式が多かったと思います。

ただ、宗教観が変わってくるこれからの時代は、亡くなった方のご家族が自分たちで葬式をつくる「簡素化」という意味での要望だけではなく、葬儀の中身について「こういう風にしてください」という要望を出して、葬儀社が形にして提供するようなスタイルが理想だなと考えています。
結婚式だと新婦さんが「こんな結婚式がしたい!」っていう理想があると思うんです。最近だと、新郎新婦が参列者の方に楽しんでもらうために自分たちで内容を考えるスタイルも増えてきています。(直近1年3カ月の間に10度参列しているので間違いないと思います笑)
―― 確かに、結婚式ってすっかり今では、新郎新婦が自分たちでつくるみたいな感じですよね。昔は、仲人夫婦が高砂の両脇に居て、みたいなパターンがお決まりでしたが。
大学生のころ(もう四半世紀前!)、ビデオ撮影をするカメラマンのアルバイトを結婚式場でしていたので、昔の時代の面影を記憶しています。
葬儀屋の息子:そのとおりです。ただ、どんな形式に変化していったとしても、人生で最も辛い1日を、幸せだったことに最も気づけた1日に変える。この想いはブレません。
大切な人を亡くして不幸のどん底にいる人に対極の幸せを伝えるなんて簡単な仕事ではありませんし、スキルと情熱がなければ決してできません。
しかし、業界のイメージを変えて憧れを生むためには、仕事そのものの難易度を高め、高い人間力と優秀で高いスキルがないとできない状態に変えていく必要があります。
僕のやろうとしていることを遂行するためには、一般的な葬儀社とは異なる能力が必要になってきます。必要な商品項目を順番に聞いていき、決まった司会進行を当日に行い、会場案内を行うといった単純な業務ではありません。
「お客様からの深いヒアリング能力」や「ご家族から聞いた人生の物語をカタチにする力=ナレーションの構成や想い出ギャラリーなどの空間プロデュース能力」が必要になります。
イメージとしては、世間一般で言う「トップセールス」「空間プロデューサー」のような人たちを指すのかなと。それも、葬儀という仕事への熱意やホスピタリティを持ち合わせた上で、です。
その意味で、これから入ってきてくれる人には、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)の中で、必要なことをどんどん教えていきたいなと思っています。
―― 業界に憧れを生むために、仕事の難易度そのもののハードルを上げようとしているなんて、ちょっとしびれるアプローチですね。
聞いていていつも思うのですが、ノブくんがやろうとしている挑戦には、意図や計算が何重にも用意されていて、1つのチャレンジに挑んだ結果、幾つもの効果や結果が生まれるみたいな設計になっていますよね。
すでに、新たな仲間たちの存在も見え隠れしていますし、これからがますます楽しみです!
葬儀屋の息子:ありがとうございます!
―― ちなみに今日は、いろいろ他にも話を聞いたのに書けない内容が多くて、短めのインタビュー記事になりそうです(※)
ただ、短いながらも、この業界に飛び込もうか迷っている人たちには参考になる内容になったのではないでしょうか。
引き続き、こんな感じで、インタビュー記事もどんどん増やしていきましょう。
葬儀屋の息子:ぜひ、お願いします!
葬儀屋の息子日記メモ
※ 実際のインタビューではオフレコで、葬儀屋の息子の経営戦略が多く語られた。