価格競争ではなく、サービスで差別化を図り、地域ビジネスの限界を超える
日記のあらすじ
公営火葬場の話題やショート動画への反響をきっかけに、葬儀業界における「料金の分かりにくさ」がテーマとなった今回のインタビュー。
見積もりを出さない、不透明な一式請求、ドライアイスの過剰請求などの実態と、その背景にある葬儀社の心理について、葬儀屋の息子が語ります。
一方で、アルテは、創業時から明朗会計を貫き、地域での信頼を積み重ねてきました。現在は、その土台の上でサービスの差別化を進め、手応えも生まれ始めているのだとか。
価格ではなくサービスで勝負する姿勢、ネガティブな声に左右されないメンタルなど、葬儀屋の息子の経営者としての考え方が垣間見える対談となりました。
もっとまっとうに戦えばいいのに
―― こんにちは。今日も始めましょう。
葬儀屋の息子:お願いします!
―― この前、アルテの目の前にある火葬場が実は公営で、みたいな話がありました。
あの話題に関しては「人を火葬するのにいくらかかる?」というタイトルでショート動画もつくっていましたね。
https://www.instagram.com/reel/DW6VI_Dkuvp/?utm_source=ig_web_copy_link&igsh=NTc4MTIwNjQ2YQ==
その動画には、いろいろなコメントも寄せられていて「勉強になる」「知らなかった」みたいなリアクションが確認できます。
この葬儀の料金がよく分からない問題って、ノブくんのところはどうしているのですか?
葬儀屋の息子:うちの場合は昔から、明朗会計でやってきました。希望されるお客さまには、2回目以降で、通夜・開式前までに見積もりも用意できます。
―― 逆に、分かりにくい葬儀社も実際にはあるのですね。
葬儀屋の息子:残念ながらあります。料金を隠したり、見積もりを出さずに最終着地で料金を明らかにしたりする会社です。その最終着地で示す料金も、葬儀費用一式として、内訳が分からないケースすらあります。
その背景には、人手が足りていない、面倒臭い、何か悪さを隠しているという可能性が考えられます。
また、お客さんの側も、相場を知らない上に、大切な人が亡くなった場面でお金についていろいろ言いにくいという心理もあるので、その人間心理を葬儀社の側が巧みに利用しているのだと思います。
「終活」する方にとっては、ネットの登場で、事前の相場チェックもできるようになりました。しかし、多くの方は突然、ご家族が亡くなり、調べるゆとりもないまま葬儀社に連絡するという形になってしまっていると思います。
その結果、不当な金額を支払わされるお客さんが出てきてしまうのだと思います。
―― 何か悪さを隠しているという言葉がありましたが、例えば、どんな悪さがあるのですか?
葬儀屋の息子:例えば、ドライアイスのかさ増しです。ドライアイスは基本的に24時間で1回交換するのですが、実際は2回で済んでいるのに、3回分使用した金額として余分に請求するような手口です。
ドライアイス1回あたり8,000円とします。仮に、年間200件のお葬式を行う葬儀社の場合、毎回8,000円をかさ増しすると、年間で約160万円の増益になります。かさ増しの回数を増やせば、その分だけ利益も大きくなっていきます。
―― 確かに、素人には、本来2回で済んだのに3回にされていたとしても分からないですよね。他にも、何かあるのですか?
葬儀屋の息子:10万円、20万円など、遺体を火葬するだけの葬儀料を前面に打ち出しておいて、問い合わせのあったお客さんに、結局はもっと高いサービスを契約させる会社があります。
他には、大してコストがかからない業務を最初、見積もりに費用として入れておいて、打ち合わせの段階で割引して、お客さんに得したように感じさせる会社もあります。
しかし、僕からすると、こうした同業他社に対しては正直「もっとまっとうに戦えばいいのに」と思います。

ちょっとでも値上げすると、お客さんを他社にもっていかれてしまうかもしれないという不安も分からなくはありませんが「価格でしか勝負できてねえぞ!」と思います。
サービスを差別化し、「このサービスでなら勝負できる!」という状態にもっていく努力こそが経営なのではないでしょうか。
加えて、現状の世界情勢を少しでも耳に入れている人であれば、物価が高騰している世の中であるとは既知の事実のはず。値上げも理解してもらえるはずです。

この辺の不透明なサービスは、ネットが登場する昔の方が、もっとひどかったです。そもそも、昔の方が、葬儀の参列者が多く、お葬式の費用が高い傾向にあったので、より不明瞭な部分が多かったみたいですね。
―― ネットがない時代は、不明瞭な会計が多かったという話、なんとなく想像できます。なにしろ、葬儀の世界は縁遠すぎて、言われる金額を支払うしかなさそうですもん。
とはいえ、そのネット登場以前の時代も、おじいちゃん、お父さんの時代の〈アルテふくの斎苑〉はきっと、明朗会計でやってきたのですよね。
葬儀屋の息子:そうですね。父親も明朗会計でやってきました。
―― 周りが、ちょっと悪さをしてでも高い金額を請求しがちだった時代に明朗会計をなぜ貫けたのでしょうか。
葬儀屋の息子:まず、父親の性格上、こっそりかさ増し請求できる人じゃないと思います。また、うちの父親はバカじゃないので、悪さをすれば長期的にメリットはないと判断したのだと思います。
町の葬儀社は、同じ地域の人たちを相手に、10年~20年のスパンで戦っていく必要があります。信頼が大事な世界で、不明瞭な会計で戦っていこうという発想が生まれてこなかったのだと思います。
「競合と比べてアルテさんは高い」と言われていた時期も過去にはあったようですが、仕入れコストの増加、会場代、人件費など、必要な部分に、まっとうな理由で費用を請求してきた証拠だと思います。
結果として今では「福野と言えばアルテ」という感じで、地域からの厚い信頼を築けています。
これって、富山市の人間でもやってもらえるんですか?
―― そうした地域の土台、信頼の上で、都会から帰ってきたノブくんが今、サービスの差別化を図ろうとしているわけです。ますます、アルテの未来を感じてしまいますね。
それこそ、すごく変な話ですが、こうして毎週、インタビューを繰り返すようになって、この前、ふと思いましたもん。
葬儀屋の息子:何をですか?
―― ああ、自分が死んだときは、ノブくんのところで最期、送ってもらいたいなと(笑)
少なくともノブくんと私は15年ちょっと歳が離れているので、普通に考えて私の方が先だろうと。
となるとその時、ノブくん、なんてスピーチするのかな、このインタビューの話をしてくれるのかなとか考えちゃいました。お風呂に入りながら(笑)

葬儀屋の息子:それは、本当にうれしいですね!
―― まあ、実際問題、富山市からの移動やら何やらで、依頼する側も手配する側も滅茶苦茶大変になるんでしょうけれど。
葬儀屋の息子:確かに、なかなか大変にはなるのですが、うれしいことに同じような話を先日もいただきました。
南砺市に暮らすご高齢の方が亡くなって、富山市に住む孫世代の6~8人くらいの若い人たちが葬儀に参列しました。葬儀を終えた時にその方々が「これって、富山市の人間でもやってもらえるんですか?」と話し掛けてくださいました。
理由を聞いたら「親が亡くなった時にやってもらいたい」と言われました。「搬送料金や公営の火葬場使用料は少し上がりますがもちろん可能ですよ」と答えながら、自分のやってきた仕事に結果が表れてきてうれしくなりました。
―― 住んでいる地域に関係なく、葬儀屋の息子にお願いしたいからわざわざ南砺市まで来るという人が、少しずつ現れ始めてきたのですね。
葬儀屋の息子:各地域には、少なくとも1~2社の葬儀社があります。アクセスの良さで選ぶ利用者が多かったり、地域ごとに風習が違ったりして、葬儀ビジネスに圧倒的な一番を生まない制約も事実として存在します。
それでも、アルテさんに任せたい!という市外からのお客さんが増えてくれればすごくうれしいですね。
―― 結果が出てきたと感じる瞬間は他にもあるのですか?
葬儀屋の息子:ナレーションのサービスを始めてまだ半年くらいではあるものの「ナレーションのこと、聞いたよ!」みたいな声を最近いただけるようになりました。徐々に浸透してきている実感も少なからずあります。
もちろん、この日記だとか、1日密着の動画だとか、アルテを知っていただくためのきっかけをこれからもいろいろつくっていくつもりですが、やっぱり直接体験が一番で、心への刺さり方が違います。
葬儀体験そのものは、お客さまとの出会いや弊社の財産にもなると思っていますので、どれだけ忙しくても、基本的には葬儀の依頼を断らないようにしています。
―― ただ、認知度が広まってくると、目立った分だけ、ネガティブな反応も増えてくる世の中です。特に、足を引っ張ってやろうという動きも出てくると思います。その辺は大丈夫ですか?
葬儀屋の息子:足を引っ張るようなクレームに合わせて自社のサービスややり方を変える必要は全く感じていません。
―― ノイズが気にならない心の強さというかマインドは子どものころからなのですか?
葬儀屋の息子:いえ、子どものころはむしろ気にする方だったと思います。しかし、小中高大、社会人と経験を積み重ねていく中で、思考の習慣を身に付けていったのだと思います。
もちろん今でも、何かを計画する段階では、ネガティブな要素を複数想定して対策を講じます。しかし、いざやるぞ!となったら、ネガティブな面に脳と行動を向けないようにしています。
―― 京セラ株式会社の創業者で、JALの再建もされた、現代の経営の神様とも言われる稲盛和夫さんのようなマインドですね。稲盛さんは「楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する」という言葉を残しています。
葬儀屋の息子:いや、まあ、それほど明確に言語化していたわけではないのですが、考え方としては同じだと思います。
それよりも、マサヨシさん、なんか今、こうやって話しながらふと思いました。マサヨシさんとの会話は、仕事というよりも、僕にとってのリラックスの時間ですね(笑)

―― ハハハハハ(笑)いきなりなんですか?
葬儀屋の息子:今日なんて、割とダークな話を僕から引き出し続けるじゃないですか。普段、頭では考えていても、口にしない業界の悪い部分を、いつの間にかしゃべらされているわけです。
実際に、声に出してみると、なんだかリラックスしている自分がいます。とにかく聞いてもらえるだけでストレス解消になるみたいに言う女性たちがいますが、そんな感覚だと思います(笑)
―― いやいや、インタビューして、未来のお客さんや一緒に働く仲間たちにノブくんの深い部分を知ってもらいたいと思っているだけです。ただ、その中で、しゃべっているノブくんまでもが癒されているのであれば、私もやっているかいがあります(笑)
この調子で、これからも続けていきましょうか。
葬儀屋の息子:ぜひ、よろしくお願いします。マサヨシとノブヨシ、ヨシ×2、つまり、絶好調なコンビということで。
―― 本当だ。ノブくんノブくんと呼んでいたけれど、ノブヨシで、ヨシヨシつながりですね。
葬儀屋の息子:笑笑。信頼してます。これからも、ドカンとお任せします。
―― 今日の話は、悪い方向に流されがちな業界で、おじいちゃんやお父さんは公正さを貫いてきた、その土台の上に今、ノブくんが新しいサービスを持ち込んで差別化を図り、価格競争ではない、価値での勝負を始めようとしているという話でした。
なんだか、ノブくんが本当に、葬儀に対する価値観を変えちゃう未来が見えてきました。楽しみですね。とりあえず、今日のインタビューはこの辺にしましょうか。
葬儀屋の息子:ぜひ、楽しみにしていて下さい。本日もありがとうございました!
―― こちらこそ、ありがとうございました。